命の長さを決める人

仕事

すっかり秋の風になりましたよね。

日中はまだ暑いですが夕方ふと感じる秋の気配。
あ~暑い暑いと言っていた夏が思ったよりも早く過ぎていってちょっとあっけないような気もします。

数年。
何時頃に長袖を着始めるのかを記録していたことがあります。

遅かった年は11月頃まで半袖でいて…
勿論夜は長袖ですがお昼間とか一体いつ頃まで暑いのかなぁと空を見上げていたことがあります。

そして…
夏の夕方の出勤の時はまだまだ明るくて気持ちもさぁ行くか~と元気ですが段々秋が深まり着て出るものが長袖になると外は暗くてちょっと切ないんですね。

行く道は仕事が終わって帰る人とすれ違いますが反対にこちらは今から仕事で…

秋から冬の出勤はなんだか気持ちも沈みます。

今日はトラブルもなく無事に仕事が終れるかなぁと緊張して徒歩数分の間に色々考えながら歩いていくのです

落ちきってしまう

この落ちる落ちてると言うのは以前のブログでも書きましたが利用者さんの体力や出来ていたことが出来なくなる…
これを落ちると言う表現をよくします。

体調が悪くなって入院する利用者さんが時々います。
一時的なものだと帰ってくるでしょうが帰ってきても落ちすぎててたったの10日ぐらいで?
別人かと言う様子になってしまいます。

高齢者さんは若者と違って10日入院しただけでも筋力の低下やご本人の記憶も薄れてしまい長年いたはずの居場所に戻ってきてももう目は遠いところを見てしまっています。

そして容体が悪くなるのはほとんどが誤嚥性肺炎と言う状態になって病院での治療を受けて何とか戻ってこれても以前のような食事の形が取れなくて介護食…

キザミと言う状態にしたり

これおかずを細かく刻んでいることですが飲み込めない利用者さんにはムース状態にして提供することも多々あります。

ムース状と言うのはそうですね。
クリーム状でおかずの形をしていない味気ない見た目になっています。

その人それぞれの食べれる状態にして提供をするわけですが一回誤嚥で入院した方はほぼ口からの食事を取れない方も多くてそれがさらに悪化すると胃ろう…
これ胃のあたりに穴を開けて直接胃に栄養のあるドロドロしたドリンクのようなものを注入することになるんですね。

味気ないお食事。

外国では胃ろうすることがあまりないとネットで見たことがあります。
でも日本では口から栄養を取れないと胃ろうにして生きていただくことが多いと思います。

寝たきり…そして胃ろう…便が正常に出ないとお腹に穴を開けてストマと言う人口肛門を作りビニールのパックに便を溜めてそれをわたし達ヘルパーが絞りだして処理をすることもあるんですね。

胃ろうって…
胃ろうでも生きていきたいかどうか。
なんの対処もせずに死んでいくのを見守るだけがいいのか。

自分だったらどうして欲しい?
そう考えることが多くて秋や冬の仕事の日には外の暗さに比例してあの人はどうして欲しいんだろうなぁ…

もやもやした気持ちは誰にも解決は出来ません。

そのご本人ももう自分がどうしたいかなんて決めることも出来ません。

命の長さはご家族さんが決める。
ご家族さんがいない場合はその施設の訪問看護師さんが決めるか契約してるお医者様が決める。

たくさんたくさん疑問が沸いてきますが

わたし達がどうしよもない。

与えられた仕事をするだけ。

十分生きた

何時頃でしたでしょうか。

亡くなったのは…

去年の秋ぐらいだったと思います。
系列の施設からこられたほぼ自立のおじいちゃんがいました。

おじいちゃんと表現しますが見た目は大変お若くて自立なのでご自身でご飯も食べれてトイレも行くことが出来る方でした。

系列の施設ではヘルパーにも看護師さんにも暴言と暴力が酷くて退去勧告も出たそうです。
生活保護の方でそれまでにいた施設でも問題行動が多くてあちこちの施設でも退去勧告でもうどこにも受け入れてもらえない。
そんなおじいちゃんはフジカワさんと言う方ですが何故かうちの施設に入居してこられた時は大人しく挨拶もきちんとしてくださり自立なので手がかからない方でした。

サマリー(カルテのようなもの)を見ると系列の施設では面倒が見れない…
これはいつものことなのでまたか~と言うぐらいの印象でしたがビビったのはなにかあればオンコール(ナースさんに連絡をすること)じゃなくて

警察に電話してください

と書いてありました。

わたし
わたし

け け 警察?


通常。
体調が悪くなればナースさんにオンコール。
施設内での出来事で緊急の場合にはサ責(施設の責任者)にオンコール。

それが警察に電話って初めてのことがサマリーに書いてあり前の施設で一体なにをしてきたんだろう…

暴言や暴力。
これはよくあることなのに警察に電話って…
なんて言って警察に電話するんですか?

暴れてるー?

うちの施設のヘルパー達はフジカワさんにビビりながら接していました。

でも。
暴言も暴力もない。

おばあちゃん達に…
あ お姉さまでしたね。すっかり忘れていました。

職場のスタッフはおばあちゃんが多いのでお姉さまと言う言い方をするんですがそのお姉さま達に

わたし
わたし

フジカワさん特に問題ありませんよね

そう言うと

お姉さま
お姉さま

猫かぶってるんちゃうか


そうかなぁ…
月日が流れてもフジカワさんは大人しくお礼も言ってくださるし問題がない。

そんなフジカワさんの容体が悪くなり酸素をいつも入れることになりました。
鼻にビニールの管をつけて酸素を吸入していただかないとSP02が正常値にならない。
このSP02と言うものは体内の酸素の数値ですが血液中のヘモグロビンが酸素をどれくらい運んでいるか示す割合で…
これは今調べたことですが普通にO2いくつ~?と簡単に言いますが実は重要なことなんですね。

そのO2は正常値で96~99。
これがフジカワさんは酸素を入れても80台で…

酸素の機械を居室に置いて食堂に来るときは持ち運べる酸素の機械を引きずって苦しそうに歩くフジカワさん。

ハァハァ…
そう苦しそうなフジカワさんのある夜のことでした。

指令は出ていませんがサーチレーション(SPO2を計る小さな機械)で測ってみると60台。
これはもう重病であるサイン。

すぐナースさんにオンコールをして

わたし
わたし

フジカワさんO2が60台ですが

その夜のオンコール当番のナースさんは一番古い方でした。
そのナースさんは

ナースさん
ナースさん

酸素いくつ入ってるん

わたし
わたし

2リットルです

ナースさん
ナースさん

2リットル以上入れられへん

わたし
わたし

んじゃどうするんですか?

しばらく無言の時間があり

ナースさん
ナースさん

朝まで様子見てまた連絡してくれる?

わたし
わたし

朝までって今の時点で60台ですよ

そう言っても2リットル以上いられへんし。

そう答えるナースさんに

わたし
わたし

どんだけ下がれば急搬するんですか?


救急車を呼ぶことですがナースさんはしばらく様子を見てとしか言いませんでした。

切られた電話に

わたし
わたし

あのババア 仕事したくないねんな

サーチが60台…
もうこの夜は朝まで一睡もせずにフジカワさんの居室を行ったりきたりして何度もバイタルを測りサーチを測り…

汗だくのフジカワさんがベッドの下に倒れていたり苦しそうな息をして青い顔をして…

そうして迎えた朝のこと。

またSPO2を測ってみるととうとう30台まで落ち込みました。
そしてオンコールをして

わたし
わたし

フジカワさんサーチ30台ですけど

30台かぁ…
そうつぶやくナースさんに

このまま放置ですか?
亡くなりますよ。

すると

ナースさん
ナースさん

午前中には行くわ


話にならない。
瀕死の利用者さんを放置。
午前中って一体何時?

言葉に詰まっていると

ナースさん
ナースさん

もう 十分生きたんちゃう?


十分生きたかどうかは貴方が決めることじゃない。
わたし達は目の前で瀕死の人を放置してもいいはずがない。

やるべきことをしてそれでもだめなら運命かもしれないけど病院への連絡をするのは貴方の仕事なんじゃ…

話にならないナースの電話を切ってサ責にこれらのことを伝えるとすぐに飛んできてくれました。

ナースさんとのやり取りをサ責に言うと呆れた様子でしたが救急車を呼んで付き添いをして病院へと向かっていかれ…
後で聞く話によると

系列の施設に入居しておられた時にスタッフの皆さんに暴力をふるい暴言を吐きナースの皆さんにも暴力をしておられたそうです。そのせいで何人もスタッフが辞めてしまいこれ以上この利用者さんを置いていたらみんな辞めてしまう…
そんな状態があったせいかナースさんはフジカワさんに至極冷淡になっていたんでしょうね。

ご自身もかなり殴られていたとかで認知症がある利用者さんならともかく頭がクリアな状態での暴力はもうどうしようもない。

だから何かあったら警察にとそこまでの判断だったのでしょう。
それらを文章では見ていたわたし達ですが実際に目の前で苦しんでいる利用者さんを放置は出来ません。

だから何度も何度もオンコールをして…

そして最後に言っていた言葉が


もう十分生きたんちゃう…

って。

フジカワさんの命の長さはナースが決めることじゃない。
この朝は怒りに震えて帰ることになりました。

介護の仕事とは

しょっちゅう暴力をふるうイケタニさんがお医者さんからの指示で入院することになりました。

普通では体調が悪くなり入院となれば救急車で運んで突然なことになります。
ところが受け入れてもらえる病院がなく何日も施設にそのままおられました。

脱水症状の判断をされて食事は取れていましたが入院の指示が出て…

なのに何日も入院されていないので出勤の日にそれとなく尋ねてみるとどうも息子さんが反対されているそうで。
反対って何やねんそれ。
容体が悪いから指示が出ているのに入院させるのが嫌だってまったくイミフでした。

それがやっと受け入れてもらえることになり病院はいつでも大丈夫~とのことになったのに息子さんがご自分の休みの日にしか付き添えないと言い出していたそうで…

なんだろうなぁ…
親ちゃうんか。
それが付き添いは自分が空いてる日にしかいけない。

これを聞いてふつふつ怒りが沸いているとさらに呆れることを言い出していました。

今日明日の命なんですか?

と。

今日か明日の命なら連れていくんや…
そうじゃない場合は医師から入院と言われているイケタニさんを放置かいな。

ナースさんの判断で連れていく場合もありますがご家族さんがいる場合はご家族さんが病院にお連れする関係上。
入院させるのかどうかはご家族さんの判断になるそうです。
いくら医師が入院と言っても。ですね。

命の長さが自分で決められない。
人の都合で生きられるかどうかが決まる。

介護の現場では納得いかないことが多すぎて呆れてしまうことが多々あります。

イケタニさんの入院は8日と決まりわたしの長いおやすみの間に入院されるので最後の夜。
先日の夜勤の時に

わたし
わたし

イケタニさん 戻ってこんとあかんねんで


そう言うと返事はなく…

そして好きなカルピスを口に持って行くと2口しか飲みませんでした。

次の出勤の時はもう秋になっている頃でしょう。
西の空は暗くなってしまい緊張しながら歩いていくんだろうなぁと思っています。















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