暑い暑いと言いながらそれでも秋になってますよね。
夕方の通勤では歩いて数分ですが空の色も雲の形も違っています。
外はまだまだ昼間のような暑さですがこうして秋に近づくと
出勤する時間はオレンジ色の空になっています。そして生ぬるい風が顔にあたります。
考え方の違いと現状
職場に出勤しナースさんが毎日書いてる申し送りノートを見ると
マツダさんが〇〇日に永眠されました。
4か月間のお世話ありがとうございました。
と書いてありました。
その瞬間に
ぇ….と文字を読むことが止まり天井を見上げました。
先日誤嚥性肺炎で入院されていたマツダさん。
4か月しかいなかったんだ。
そう思いながら申し送りをするためにテーブルに座っているお姉さま達に
マツダさん亡くなったんですねと声をかけると
そうらしいな~
とあっけらかんと答えます。
〇〇病院に転院されると聞いていたので
今いる病院で亡くなったことがちょっとホッとしました。
〇〇病院とはもう治る見込みのない人達が死ぬのを待つためだけの病院と聞いていたからです。
お姉さま達はそこからマツダさんについてのあら捜し会議が始まり
ああでもないこうでもないとさっきまでしていた話題なんてそっちのけになり
あのジジイは注文が多かったからめんどい
わたしは好きでしたけどね
背もたれの角度とかあれこれうるさかったやろ
背もたれの角度なんていいじゃないですか してあげても
しまった….
余計なことを言ってしまったと気がつくよりも先にお姉さまが
アンタがそうやって利用者甘やかすから調子に乗るんやで
調子に….
快適に寝るために背もたれの角度の希望なんて
はいはーいと聞いてあげてもいいと思うんですけどね。
終の棲家と言うんでしたっけ。
最後のお住まいです。背もたれごときのことゆっくり休んでいただくために
その位…
その後は想像どーりマツダさんがお亡くなりになった話から
わたしが利用者さんにあれこれする態度についてのお叱りを30分聞くことになったのは
わかると思います。
介護職じゃなくてもどんな仕事でも行う人間の考え方の違いがあると思います。
どれが正しい間違ってるとかではなく行きつくところは同じでも人間性と言いますか
想いの違い?
それで意見がぶつかることも多いんですが結局その職場で一番上の立場の人の意見が通ってしまいます。
うちで言えば立場は同じでも一番古いおばちゃんの権限と言いますか
そのおばちゃんがこうだと言えばそれが間違っていたとしてもそれが規則のようになってしまいます。
介護の世界ではやれることはご本人にしていただく。と言うことが多々あります。
しかし時間に追われてる中でしていただく行為をじっと待ってることが出来ません。
なのでわたしは靴をはける利用者さんの靴ははかせてしまいます。
すると違う考えの人ははけるんだから手を出すなと言う人もおられます。
マンツーマンで対応してるなら出来るかもしれませんがそんな余裕のある施設は少なく
あれもこれもしなくちゃならない。
そのシフトの時間内で終わらせないといけないことは利用者さんの為にならなくても
早くやってしまいたい。これが現状です。
そんな中で最近あるお姉様と少し言い合いになったりもしました。
手を出すな自分でやらせろ、そうなると一人夜勤のわたしには時間的に無理が出てきます。
ただでさえ介護度上がってる方が増えてる最近では
ペットボトルの蓋が開けられない利用者さんが蓋を開けてるのを待ってられない。
ちゃちゃっと開けて渡してることを指摘されてしまいました。
居室対応の方も増えてきて…居室対応とは食堂にこれる体力がなくなり
ご自身の居室で食事とかしていただくことですが1部屋1部屋食事を運び
ベッドの高さや背もたれの角度、テーブルの位置やティッシュを置く場所などを整える時間。
そして食前のお薬を飲ませなくちゃならない。
そんな中でペットボトルを開けるのを待ってる時間はありません。
それを言われたんですね。
日勤さんは人数も多くペットボトルを開ける時間が待てるかもしれません。
夜勤は全てのことを一人でこなしてるのでそんな悠長なことが出来ません。
ただ…
そうして忙しい時間には関わりも出来ない代わりに
夕方から朝までの時間はのんびり利用者さんと接することが出来ます。
ラウンドで居室に伺う時にはマツダさんはかなりのイケメンおじいちゃんだったので
昔はモテたやろ~
いやいやそんなことないで
優しいし話し方も穏やかだしなんと言ってもお世話後には必ず
世話かけてすまんね ありがとうな
そう言ってくださるマツダさんが好きでした。
背もたれの角度なんて言われる前にお好みの角度をわかっているので
こんなぐらいでかまへん~?と聞くと
そうやそうやそんなぐらいがええわ~とご満足されている様子。
それを自分でやれるねんからやらせろと言うのもアリかもしれませんが
もう箸を持つ体力も残ってはいません。
それでも頑張って箸でご飯を食べてる…背もたれのリモコンを持たせるのがその人の為なのかよりも
マツダさんの生きてきたお話を聞いてあげる方が嬉しいのではないかとわたしは思うのです。
リハビリをしてこれからまだ元気になっていただく。
そんな程度ならなんでも自分でやってもらうのも希望がありますが
残り少ない時間を穏やかに過ごしていただく。
そして多分もう時間があまりない….
ならご気分よく過ごしていただく方がいいのでは。
そういう考え方と違う考え方でよく職場では揉めますが
一人の夜に利用者さんのお話をあれこれ聞いてあげることしか出来ない。
そんな介護もアリじゃないかと思うのです。
マツダさんは居室に伺うと娘さんが持ってこられた手作りの枕カバーを嬉しそうに話されて
いい娘に育ってくれてありがたいと目を細めておられました。
娘さんは時々訪ねてこられマツダさんのことを職員にくれぐれもよろしくお願いしますと
言われていたそうです。
俺様世代
昭和のおじいちゃんはとにかく俺様が多いです。
昔って男性が働いて家族を養う?これがふつーでその代わりに
家ではなにもしない、何故なら俺様は働いてるんだからなーっっ
今では考えられない昭和のおじいちゃん世代は男と言う性を現代にも貫いておられます。
マツダさんが入る少し前にまさしく昭和のおじいちゃんの見本のようなイシダさんが入ってこられました。
入所当日は何かと利用者さんも不安になり寝ることがあまり出来ません。
その夜わたしの夜勤当番でいやーな予感はしてました。
サマリーを見ると…
サマリーとはその人の略歴が載っているものですが
イシダさんの半生を簡単に書いてあるもの確認すると…
〇高度成長時代に重機オペレーターをしていた。
〇儲けたお金は全て遊興費に使い嫁と離婚。
〇後年の仕事は不明
〇生活保護を受けて一人暮らしをしていた昨年コロナで倒れてるところを通報されレスキュー隊から救助。
〇暴言、暴力を繰り返しどこの施設でも退去勧告。
暴言と暴力っっ
暴言はよくありますが暴力….
またやっかいなん入ってきたなぁ
出勤すると申し送りもそこそこにしてまずはイシダさんの居室にご挨拶に向かいました。
初めまして~今日の夜勤の〇〇と申します~
すると
メシを食っとらん はよ持ってこい
お食事終わられてますよ~
わたしは18時出勤なので夕食は終わってる時間になります。
でも食べた記憶がないイシダさんはその後もずっと食っとらんと大声で叫んでいました。
事務所に戻り日勤のお姉様達に
ちょい初日から厳しそうですねぇ
そう言うと日頃仕事が足らんとか覚えが悪いとか散々言ってるクセに
アンタならいける がんばり
そうしてみなさんは逃げるように退勤していきました。
想像通りイシダさんは夜間中。
一睡もせずに動き回り利用者さんの部屋のドアを開けて中を覗き込みなにやらブツブツ…
寝るお時間ですよ~と促しても
うるさいっっ俺がすることにぐちゃぐちゃ言うなーっっ
施設の中を点検するようにあちこち触り開かないドアを開けようと
ガチャガチャしまくり
開く場所では中に入ってるものを取り出し廊下にばら撒いていました。
確か2時頃のことです。
洗面所に行き排水口でなにやらしているのが監視モニターで確認が出来ました。
でも止めようとすると大声で叫ぶので行動をただ見ていると…..
またも大声で
ワイヤーロープ持ってこいっっ
慌てて2階に駆けつけて
ワイヤーロープってなんですか?
おまえらがきちんと掃除してないからここが詰まっとる
お掃除してくださったんですね でも….
夜中の2時なので明日やりますね~と言うと
今やれーっぼけーっサボるなーっっ
これがイシダさんの入所当日の夜中のことでした。
その後のイシダさんは想像通り前代未聞に暴れまくり
スタッフを殴ってケガをさせたり事務所のドアを破壊して外したり
利用者さんとの格闘…わたしも蹴りを数回いれられました。
そして。
職員から退去勧告の署名集めだのなんだのもあったのちに転んで歩けなくなってしまいました。
職員全員の万歳が盛大にされた利用者さんなど今までみたことがありません。
転んで寝たきり…
ご本人はまだまだ歩くつもりだったのでベッド柵を持ち上げ周りに投げつける行為を繰り返し
近寄る職員にげんこつを振り回し
暴言を吐きながらの日々の最後に誤嚥性肺炎で入院されました。
あ~これで平穏が訪れる…
なんだったんだろうあの戦争の日々は….
と思いながらのしばらく経ったある日。
申し送りノートにイシダさんが永眠されました。お世話ありがとうございましたと
書いてありました。
誰にも看取られることのない人生の終末。
いなくなったことが喜ばれるその人の存在。
暴言暴力で昭和を生きてきて誰も近寄らない寂しい人生。
片や家族を大事にして泣いてもらえる死。
どちらが理想なのかはわかる人とわからない人がいます。
わたしで言えば今いる周りの人達を大事にして感謝をしながら生きていけばきっと泣いてもらえるのではないかなぁと思っています。
まだ空いたままのマツダさんの居室前を通ると
天国でも幸せになってな~
と思い手を合わせます。
そして空いたままのイシダさんの部屋の前に来ると
天国の人らに暴力振るったらあかんで
こんなこと言ってるのは誰にも内緒です。
コメント
大変沁みました。色々な考え方があるのは勿論なことですね。身体を大事にお仕事頑張って下さい。